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「ネタがなければ作るまでです!!」 新聞部部長(在籍一人)の花丸笑(はなまるえみ)が唐突に俺に何かを言い訳のごとく語ってきた。 この花丸という女子は、俺が今まであった中でも1、2を争うくらいに厄介な存在である。性格はアレ(・・)なくせに容姿はカワイイときているから余計に厄介だ。 特別整えているわけでもない、しかしサラサラと流れるような肩まで掛ったキレイな黒髪は特徴的だ。 そして、彼女は尚も語り続ける。 「いいですか。サンタ君。世の中にはネタがたくさんあふれているように見えますが、そのどれもが新聞に載せるだけの資産的価値があるものではないんですよ。有意義な情報には興味・価値・情熱・気品さ・優雅さがあるんです。つまり何が言いたいかというと――――――――――」 サンタというのは俺のあだ名だ。 「まてまて。そんなそれっぽいこと言って、新しいことに挑戦している風な言い方はやめろよ」 「何を言ってるんですか、ブルータス」 「ブルータスじゃねぇし、ブルータスすでに死んでるじゃねえか。」 「じゃあレッ○ブルのほうがよかったですか?」 「人じゃないじゃん、飲み物じゃん。名前がそれっぽいだけだろが。お前にとっておれは飲み物とおなじ扱いなのか?」 「週刊少年サ○デーの下のほうにある矢印くらいの重要さはありますよ?」 「いらなっ! 限りなくいらない子だよ、俺」 「何を言うんですか! 私にとっては法律の話題を出さない『行列ので○る法律相○所』くらい大事なポジションですよ。ドラ○ンボ○ルならヤ○チャ。ジャン○ルの王者○ーちゃんならペ○ロ。バイ○ハ○ードならリッ○ーといった感じです。」 「ほとんどネタ要因じゃないか! 後半のたとえに関してはやられキャラのオンパレードだよ!」 「まぁまぁ。ペド○は作中では頑張り屋さんなんですよ。ヤム○ャみたいに結婚もしないでプー太郎にならずに頑張り続けたんですよ。」 「やめろ! ○ムチャがかわいそうだろうが! あいつはあきらめたんじゃない。引き際を悟ったんだよ。自分の役目を終えたんだよ。中途半端なファッションが似合う男性にクラスチェンジしたんだよ。」 「乙www」 「『乙』じゃねえよ!」 結局何が話したかったのか、ほとんどヤムチ○の話に話題が移ってしまった。 ヤ○チャ…。おれはお前の味方だぞ。 唐突に、何やらゴソゴソと部室で準備を始める花丸に、コホンと咳をして俺は尋ねる。 「で、俺が呼ばれた理由は何なんだ? そしてあの前ふりの語りは何だったんだ?」 そう、俺はまだ何にも知らされずに、この新聞部に来させられたのだ。 「ちょっと人手が足りないので、強制的に来てもらいました。あと語りに関しては始まりをそれっぽくしただけです。張りぼての城とおんなじです。中身なんてありません。期待するなっ!! このゴミ虫が!!」 「えー。何で勝手に語っといて怒られてんのおれ…。……もういい、帰るわ」 「だが断る!」 「ほんとに強制っ! 拒否権を要求する!」 「それも断る!」 「やりたい放題かっ!」 「観念してください。まぁ、お礼と言っては難ですが、僕のパンツを差し上げましょう。まったく…。ほんとにどうしようもないド変態ですね。ぷんぷん。」 「まてぇい! ド変態はお前だろうが。『ぷんぷん』じゃないよ! おれのキャラをエロのベクトルに持っていこうとするなよ。健全だよおれは」 「え…。三枚がよかったですか。やむ負えないですね」 「枚数の問題じゃないよ。モラルの問題だよ。何がやむをえないの? 」 「わかりました。ではブルマをつけるということで。え!? いいんですか!? ありがとうござ――――――――」 「こらこらこら、ありがたくないよ。OKしてないってば。そういう問題じゃないんだよ。勝手に話を悪化させるなよ。」 ツッコミが渋滞していたが、そんなことはもう気にも留めない。 「そんな、あなたがそこまで救いようのないドエロ野郎だったなんて…。わかりました。あなたを僕の14番目の彼氏にしてあげましょう。…エッチは週3でいいですね?」 「おいぃぃぃぃ! お前のほうが変態だよ! とんでもないビッチじゃねぇか! というかおれの話に耳を傾けろよ!」 「私以外の人間の話などに興味はない!」 「お前なんで新聞部やってるの? 俺の中でのお前のキャラがブレてきたんだけど…。」 放課後の部室で友人がとんでもないビッチ野郎(娘)だと知ってしまい、ひどく落ち込む俺を横目に花丸は尚も作業する。 そろそろ本当に面倒になってきた…。帰りたい…。 「よし! じゃあ行きますか。」 準備が済んだのか、一人では持ちきれないであろう荷物を机に置いて、どこかへ行く気満々の花丸。 「はい。これとこれとこれ、お願いしますね。」 そう言って花丸が指さしたのは、カメラの機材とカメラのスタンドと某不○家のペ○ちゃんの人形。 ? …なんで○コちゃん? こいつ不二○からパクってきたのか? そんな俺の疑問もぶっちぎりで気にも留めずに花丸は事を運ぼうとする。 「よし。じゃあ最初は保健室に行きましょうか。今の時間帯なら誰もいないと思いますし。」 「ちょっ、何しに行くんだよ。しかも保健室って…」 「え…。…………っ! そんな…。そんなにえっちぃことしたいんですか…。わかりました。Cまでならいいですよ? 」 「もういいってば。いい加減にそのビッチをやめろ。そして俺のキャラ設定を改めろ。」 「じゃあAで」 「…なんでそうなるんだよ。」 「思春期男子の思考の9割9分9厘は、ほぼエッチな暴走が占めているとの情報が」 「誰情報だよ」 「僕の兄です」 「あぁ…。大吉(だいきち)か…。あいつ今日も暴走してたの?」 「はい。今日も3時間目の休み時間に教室で『笑! お前の今日の下着の色を聞くの忘れてたぜっ!』って言って来ましたね。なので『僕今日履いてないよっ!』って言ったら、クラスの男子が一斉に前かがみに蹲(うずくま)り、兄に関しては鼻血と涙が一斉に出て『ぐはぁ』と言って倒れて、クラスの女子たちにつれて行かれました。まぁ、相変わらずのことなんで慣れましたけど。」 「相変わらずの変態め…。……。…ちょっとまて、もしかして。」 「? あぁ、はい。履いてないですよ。今日はせっかくなんでノーパン主義でいこうかと」 あぁ。なんか急に込み上げてき――――― 「ぐはぁっ!!」 吐血&鼻血爆発。その後倒れこむ俺。 ノーパン最高! 俺ってこんなにウブだったのかぁ!! イヤイヤイヤ、違うそうじゃないよ。駄目だよ。ビッチどころじゃないよ、この娘。 倒れこんだ俺に、急にどうしたと言いたそうな表情を浮かべて 「えぇ!? 大丈夫ですか!? っていうか兄以外でこんなこと初めてですよ、僕!」 とまさかの返事をしてくる。 というか、俺で初めてなら今までみんなどれだけ平常心保ててたんだよ… 「あぁ、こんなに血が。すぐに保健室に行かないと! 」 あぁ…意識が。 血を流し過ぎた…。 「その前に…。パンツ…。は…履いてくれ…。 ガクリッ」 「あれ? サンタ君? サンタく―――ん!!」 あぁ…。川が見える…。 渡っても…いいよね? ********************************************* 「あれ? ここは…保健室か」 川を渡り損ねた俺は、気がつくとあまり見慣れない天井を目にしていた。 しかし、湿布と消毒液の独特の匂いが充満しており、ここがすぐに保健室であると気付いた。 「おやおや、気がつきましたか?」 「……。」 「どうしました?」 「履いた?」 「ノーパンです。」 「ぐはぁっ!」 「冗談です。…半分。」 「半分!? なに半分って!」 「わかりました、やむをえませんね。じゃあ一回だけですよ。しょうがないですねぇ。」 「どうしてそういう解釈になるの!? というか、何が一回なの!? 頼むから普通の対応をお願い!」 「…ふぅ。飽きませんねぇ、あなたは。これだけおちょくり甲斐のある人間はなかなかいませんよ? …ホントに飽きなくて…。おもしろい…人間ですよ、あなたは。」 急に落着いた口調で話す花丸。俺は少し驚いてしまった。 こいつってこんな顔できたんだ…。 「……」 「……」 やっと飽きてきたのか、それともさすがにテンションが保てなくなったのか、ついに花丸は俺で遊ぶのをやめた。 さっきのテンションの高さとは違って急にまともな反応をした花丸は、いい加減な対応をしていた時とは違って、本来の美少女の風格を醸し出していた。そのせいか俺も喋ることができない。 こういう花丸を見るのは初めてだからだろうか…。あまりにも不自然すぎて変に感じる。 ………。 違うな、俺はこんな花丸を絡まれるたびに度々見ている。ほんの一瞬ばかりだが。ここにきて、ゆっくり彼女を観察する時間が出来たため、気付いたことだ。 そう、普段のほう(・・・・・)が異常なんだ。これが花丸笑の本来の反応なのだと思う。 花丸が奇行をするたび、彼女の昔からの知り合いは口をそろえて『昔はあんなにおとなしかったのに、高校に入ってから別人みたい』と言っているのを、俺はよく耳にしている。 どうせ、高校生デビューとかを考えてのことだろう。そんな話はよく聞く。とそう思っていた。 が、これはギャップがあり過ぎだ。まるで正反対、次元違いの少女になっている現実は、どうにも受け入れがたい。ましてや、こんなビッチ思考の暴走少女なんて、どういうきっかけがあればできるんだろうか。 お砂糖にスパイス、それから素敵なものをいっーぱい入れたって、完成しえない性格だ。 おれが眉間にしわを寄せて考え事をしていると、「大丈夫ですか…?」とやはりいつもとは違う、不気味と思ってしまうぐらいの話し声で喋りかけてきた。 「えっと、気分は…よく…ないですよね…。」 思いがけず心配してくる花丸に、いつもみたいなテンションで対話をすることもできない俺は、少ししどろもどろしながらも彼女に問いかけることにする。 正直、涙目は苦手だ。あの性格に振り回されるのと同じくらい厄介だと思う。 …。 ……。 なんて言おう…。花丸相手にこんな雰囲気になっての初めてだしな…。 うーん。 「保健室。」 「……はい?」 迷った挙句、俺の口から出たのは保健室という言葉。 ここで彼女に気を使って話を聞いてあげたり、励ましたりしたらいいのだろう。が、只今低テンション&貧血の俺には対応性が著しく低下している節もあるので、彼女の興味分野の話に持っていくことにした。 …まぁ、ぶっちゃけ暗い過去話とか苦手だから、単純に今は聞きたくないという理由。 とりあえず、彼女には当初の目的である保健室の取材の方向で話を振ってみる。 「保健室で何かやるんじゃなかったっけ?」 「あぁ。それならサンタ君が寝ている間に終わりました。」 「あ。そうなの…。」 しまった。よくよく考えたらその可能性がでかかったな。しかも呼ばれておいてまったく役に立ってないという事実…。俺ってなんなんだ…。 仕方なく、次の話題を振るために貧血脳をフルに回転させていると、花丸が「結構興味深いネタでした」と自分から話を振ってきた。 「サンタ君が倒れてしまったので機材を持ち運ぶのが大変でした。」 「あ、すまない。」 「いえ、それは別に。まぁ、でもせめてペ○ちゃんは持ってほしかったですね。」 「え…。○コちゃん使ったの? あれと保健室のカップリングの先にある結果がまったく解析できないんだけど…。」 「はい。題して『かわいい人形は背景の変化に溶け込むことが出来るのか!?』です。」 「俺はそのネタにはまったくもって発展性が見えないんだが…」 「失礼な、ブルータス」 「ブルータスじゃないって」 「じゃあパンツマンで」 「ブルータスでお願いします」 「ではブルータス」 「あ、そこはブルータスなんだ…。いつもの通りにしてほしかった。」 「いいですか、パンツマン」 「そして結局パンツマンか…」 「人がやらなさそうな、一見くだらなさそうな事こそに価値は宿るものなのです。そう、例えば慎吾マ○のまねをしてマヨチュッチュッしてみたり。」 「やったことあるのか?」 「一本飲みほしました。体重がカロリーダイナマイツでしたねぇ。あれはやめておいたほうがいいです」 「うん。その前に限度ってものを知ってから試すべきだよな。おれなら卵が嫌いになる勢いだ」 「黙れ半脱げパンツマン」 「おい、なんだよそれは。もうただの変態から常連さんの勢いじゃないか。痴漢の常連だよそれは」 「そうですね、履いてないよりひどいですからね」 「いや、履いてないほうがひどいだろう! さり気に自分の行いを肯定するなよ!」 「ノーパンと変態を一緒にしないでください。我々はニュージェネレーションなんです。レジェンドとは違います」 「おい、なんでこのタイミングで筋○マンネタを投入するんだ。それとこの場面において全然かっこいい言い回しじゃないからな」 「と、まぁふざけるのはこのくらいにして。」 おい。ホントに自分勝手だな。 「まぁ保健室での作業は終わってしまいましたし。只今6時30分。外での取材も考えていたんですけど、暗くてもう撮影できないんですよね」 「あー、それに関してはゴメン…。手伝えたらもっと早く撮影できたよな…。」 よく考えたら、ぶっ倒れた原因作ったのこいつだったな。 「まぁ、しょうがないですね。また明日お願いします。」 「明日…。」 「あぁ、やっぱり駄目ですか? 予定あります?」 困ったな、どうするか…。 《ヴォンヴォン》 マナーモードにしていた携帯が鳴りだした。 「あ、ゴメン。電話でいい?」 「駄目です全脱げパンツマン」 「まさかの返答!? だが断る!」 「なら僕はその幻想をぶち破る!」 「お願いします。出させてください。」 「しょうがない。いいでしょう全裸マン」 「それもうただの犯罪者だよ」 電話出るだけでハードルが高すぎるよ。しかも、最終的に犯罪者に仕立て上げられたし。 とりあえず許しをもらった(もらう必要性のない)おれは電話に出る。 《ピッ》 「もしもし、どちら様ですか?」 『私だ私。私だよ』 「もしかして久遠(くおん)か?」 『そうそう久遠だ。実は事故ってしまってな、指定の口座に100万円ほど――――――』 《ブッ ツー ツー》 めんどくさいので切りました。 因みに今のはホントに久遠(姉さん)の声だったけど、わざわざ携帯電話に暇つぶしをしてくる相手を対応する気にはなれない。 「あれ、ずいぶん短かったですね。誰からの電話だったんですか?」 撤収作業をしていた花丸が不思議そうに訪ねてきた。 「いやなに、姉さ…。身内が、事故ったから口座に金をフライアウェイしろって」 「オレオレサギですかっ。携帯にって、相当な暇人ですね、あなたのお姉さん」 「まぁな、暇っちゃあ暇だと思うけど――――――」 《ヴォンヴォン》 「またか」 「僕のことはいいですから、出ていいですよ顔面男性器さん」 「もう人でもないじゃん、次は何になっているんだ、俺は」 《ピッ》 「もしもし、何か言いたいことはあるか。30文字以内でまとめろ。さもないと俺の脳みそがくるくるパーだぞ」 あれ…。なんか貧血のせいで呂律が回らない…。なんで俺の脳みそ大変なことになっている設定なんだ? 「(すでにくるくるパーですけどね♪)」 花丸が横で何か言った気がするけど無視。 『その…。今日は朝寝坊して…。だからあんまり話せなかったから…。…ぐす…うぅ』 「な、なにも泣くことないだろうが。」 『だって、最近はなんか冷たいし、昨日だって夕飯の時にまともに口きいてくれなかったじゃないか。愛が、愛がさめてるよぉ』 「えー、だって昨日はお前が酒飲んでワルノリしてたからじゃないか。そりゃ対処だってめんどくさくなるし…」 『ウソだっ!!!』 「いや、そんなに否定しなくても…」 『じゃあ、今夜はお前の好きなもの晩御飯にするから。』 「え、じゃあ――――」 『稲荷寿司と油揚げ単品どっちがいい? 好きな好物の方を選んでくれ』 「2択かっ! しかも好物じゃない! 譲歩する気あんのかっ!」 『何を言うブルータス』 「お前もかっ! 流行ってんのかそれ…」 『これほどにない2択だぞありがたく思え』 「主導権の逆転が起きているのに気付いているか? 俺の意見は丸々無視か」 『わかった稲荷寿司だな。』 「ほら無視だよ。俺の周りの人間のスルースキルの高さはなんなんだよ。」 『じゃあ帰る頃に電話してくれ、ハグしに迎えに行くから』 「わかった。今日は家には帰らないから」 「(まさか、女の子の家に寝泊まりですか! やりますね!)」 またもや花丸のツッコミ。多分コイツはコイツで厄介な解釈でこのやり取りを聞いているんだろうな。 『そんなに私のことが嫌いか。そうか、ならお前の机の3番目の引き出しの二重底の裏にある雑誌は捨てていいな』 「すいませんでした。愛してます。全力で愛してます。だから捨てないで」 「(なるほどなるほど。H本死守…と)」 花丸がほぼ内容のあっている推測をメモ帳に書いていた。 明日の脅迫ネタにされそうだ。そして、伝わり伝わって俺の学年での株は下がることだろう。 あとで土下座して頼もう…。「言わないでっ!」って 『そんなに好きか。しょうがないなサンタは。大体Hなことしたいなら私が―――――』 「おねがい、もう俺の心を汚さないでっ! 淫乱はもう勘弁してっ!」 『むぅ、仕方ない。じゃあホカホカでガマンしてやろう。』 「ホカホカって?」 『せいしょく―――――――』 《ブッ ツー ツー ツー》 もういやな予感しかしない…。絶対下ネタだったよ…。 「あれ、もう終わったんですか? 質問一方で終わってましたけど」 「言葉の暴力をぶら下げてきたから切った」 「ホカホカですか?」 「ねぇ何でお前が知ってるの!? もしかして俺らの話聞いてた!?」 「いえ、僕の予想です」 「俺がおかしいのか? 何でみんなこんなに話が噛み合わないんだ?」 《ヴォンヴォン》 「……。」 「出ないんですか存在男性器さん」 「もう生物でもないよなそれ…」 「じゃあチン○ンさん」 「やめてくれっ!」 今日一日で俺の中での花丸の評価が、ド下ネタ野郎に変わりつつある。 さっきのおとなしい花丸が懐かしいよ…。 とりあえず、嫌だったが、ホントに嫌だったが電話に出る 《ピッ》 「もしもし、この電話は下ネタ禁止回線です。下ネタを言った場合は家族の縁を切ります。」 『…ご、ごめんなひゃい…。ちょ…調子にのってました。…しゅみません…ぐす…でした』 ものすっごい泣き声が聞こえる…。何だろう、こう…モワモワする感じが胸辺りに…。 『うぅ。…ふ…ふぅ…う』 あぁ、なんかカワイイな…。 「(サンタ君はお姉さんにはドS…っと)」 メモを書いてる…。久遠の話し声は聞こえないのにどうやって内容を把握しているんだ、まったく…。 「(近親相姦…っと)」 「違うっ!!」 『ひゃい! …ご、ごめんなしゃい…。うぅ…ひぅ』 つい久遠と話しているのも忘れて怒鳴ってしまった。 「あ、ゴメン久遠! 違うよお前じゃない。横にいるビッチが言ったんだ」 「(さり気にひどいですね)」 『ほんとにか…?』 「うん。」 『じゃあ、愛してるって10回―――――――』 「それ以上言ったら切るぞ」 『…ひぅ』 泣きながら返事をしてきた。 泣き方かわいいな…。 『それじゃあ、大好きだと言ってくれ。お…お願いだから』 「お前今日どうしたの? とんでもなくコンプレックス強めなんだけど…」 『いいから…。』 「(ここで言わなきゃ男じゃないですよ!)」 いや、だからなんでお前は聞こえているんだよ。 「…わかったよ。もう、しょうがないな…。」 『……』 「……」 『……』 「(早く言っちゃえばいいのに…)」 「うるさい」 恥ずかしいんだよ。 電話越しに姉にLIKEな発言をする俺の気持ちを考えろ。 『ごめんなひゃい』 「あ、違う違う。ビッチのやつが」 「(僕に対する認識ビッチですか…)」 『…はぁ。もういい…。遅くならないうちに帰ってくるんだぞ』 「…あぁ。………久遠」 『ん?』 「電話、ありがとな。できるだけ早く帰るから。」 『………うん』 「それと、あいつ(・・・)のところに今日行けなかったから、明日言い訳言っておいてくれないか。」 『自分で行けばいいじゃないか』 「用事を押しつけられた」 『不純異性交遊をお姉さんは認めないからな』 「なんでそうなる。まぁ不純(・・)な異性ではあるかな」 『…わかった。しょうがあるまい。そのかわり―――――』 「わかってるって。久遠のこと大好きだよ。一緒に居てくれてすごくうれしいよ。」 「(チャラ男みたいですねぇ)」 うっさい。ビッチに言われたくない。 『……。《ガシャンッ》』 何かの割れる音がした。 「え、何? 何の音」 『す、すまん。湯呑みが落ちた。鼻から愛が溢れてしまって…』 「は?」 『いや、なんでもない。それよりもう一度。な? もう一度言ってくれ』 「え? あぁ。大好きだよ久遠…。…これでいいか?」 なんか一回言うと恥ずかしい言葉も平気になるもんだな。 それにしても何なんだ? こんな言葉を聞きたがるなんて。 『《ディッパー ブシュッ》カハッ。』 「なにがあったぁぁぁぁ!!!」 『だ、大丈夫だ。テーブルとカーペットがちょっと血まみれになっただけだ。』 「全然大丈夫じゃないよ! 何をしたんだよ!?」 『安心しろ。鼻血だからシミにはならないさ』 「いやむしろ、部屋を血まみれになるくらい鼻血噴射したお前の方が心配だよ!」 『私のことを心配してくれるのか。うれしいぞ。まさしく愛だな。式は何処で挙げたい? 教会か? それとも神社か?』 「なんでそうなる! どうして近親相姦のほうに走るんだ! 姉弟(きょうだい)だろうが! 結婚できるか!」 『……。そうだな…。姉弟なんだったな(・・・・・・・・)…』 「あ……。」 『すまない。ちょっと調子に乗りすぎた…』 「いや、その俺にとっては姉弟の関係でいいわけで…。」 『わかっている。卒業したら周囲の目も気にすることはないから、挙式を挙げようということだな』 「うん。お前の理解力の歪み方は俺ももう脱帽だよ…。内容があり得ない結婚話から離れないのはどうしてなのかな?」 『大丈夫、資金繰りは任せろ。結婚式の1つや2つくらいどうということはない』 「お前の頭の資金繰りを俺に任せてくれないか。卒業までにどうにかするから。」 『そんな卑猥な…。やさしくしてくれよ…。』 「わかった、もう何も言わないよ。めんどくさいから言わない」 今日は特にめんどくさいな、久遠のやつ。 まぁ、こういう絡みも嫌いじゃないけど。 『…。姉弟か…』 「え?」 『ちょっとな…。』 「なんだよ?」 『早く帰ってくるんだぞ。部屋はとりあえずなんとかしておくから。《ゴソゴソ》よしじゃあまず部屋を吹き飛ばして―――』 「待てぇ―い! 家を壊すな!」 『《ドカーン》じゃあな。車に気をつけるんだぞ』 「お前はお家の管理に気をつけろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 《ブッ ツー ツー》 「あ、電話終わりました? あるんだったら結婚には呼んでくださいね。姉弟結婚なんておもしろそうなんで。」 「いや、だからなんでお前は内容を把握してるんだよ」 「これが私のスタンド、地獄耳(フリーダム)の能力です」 「お前の性格と合わせると迷惑以外の使用用途が無いじゃねぇか!」 「自由こそ正義ですっ!」 「はた迷惑な自由だな…」 「とにかく、撤収準備はとっくに済んでいるんでペ○ちゃん運んでください」 「あ、まず○コちゃんなんだ」 「はい。気をつけて運んでくださいね。首が曲がったりしたら怒りますからね」 「もともとビヨンビヨン揺れて曲がってるよ」 というわけで、今日の放課後の活動は、ノーパン主義の花丸のせいで保健室のベッドに寝るだけとなってしまった。 明日はちゃんと履いてきてほしいものだ…。 *********************************** ペ○ちゃん収容後 俺は今だに貧血気味の体を動かして正門を出て帰路に着く。当然、横には花丸が一緒だ。 「頭がクラクラする…」 「ホントに大丈夫ですか?」 「う~ん、生きているってことは平気なんだと思うけど…」 「え!?」 「なんだよ…。」 「サンタ君生き物だったんですか?」 「そうだな、お前の中じゃもう変態だもんな。俺の人権無視だもんな」 「冗談ですよ♪」 「冗談に聞こえないよ」 夜の暗がりを電灯の明かりが不安定に照らす。 横に歩いている花丸は今日とった写真とネタ帳に書かれたネタを見ている。 明日とか変なこと言いふらさなきゃいいけど…。 「なぁ、あれ嘘なんだろ?」 「はい?」 「ノーパン」 「あ~、残念ながら本当です」 「……。」 「本当ですよ」 「ハッ! 気を失ってた!」 「都合のいい体してますね」 「お前こそ都合のいい脳みそ詰まっているよな」 「えっへん」 「その解釈がまさしくだよ」 どうやらノーパン疑惑は本当のようだ…。 やばい、頭がボーっと…。 ハッ! ダメダメ! 気をしっかり持つんだ俺! 「サンタ君は、質問に対してYESかNOかで答えろと言われたら、しっかり答えることができますか?」 「なんだよ急に…」 ホントにどうしたんだ? 美少女モードだぞ? 「いいから、答えてください」 「そうだな、質問の内容にもよるけど…。俺なら普通に答えるな」 「そうですか…」 「…花丸は?」 「僕は…。絶対に答えられません」 「絶対ってことはないだろ」 「いいえ、僕は絶対無理なんです。優柔不断ですから」 「は?」 こいつの口から優柔不断なんて言葉が出てくるなんて思わなかった… 「お前のどこが優柔不断なんだよ? 変な語りはしてくるし、勝手に物事決めて人を振り回すし」 「それはあくまで、僕主体の出来事でしょう?」 「あぁ、まぁそうだけど」 「実際、いま僕がやっていること(部活動)も、趣味だったことと部員が居ないことを知ったからやっているわけですし」 「どういう意味だ?」 「人が嫌いなんですよ。」 「……。」 「どうして、答えの数を分けなきゃいけないのか…。どうして質問に正確にこたえなきゃいけないのか…。それがわからないんです。みんなと話をしていても、どうしても結末を決めつけなきゃいけない…。それが嫌なんです。嫌いなんです。そりゃ、外見上は繕えますよ。でも、やっぱり不気味なんですよね…。そういう対応の仕方が…」 「…。そうか」 「だから、自分ひとりで部活をやることにしたんです。だから新聞部なんです。他人からの疑問ではなくて、自分で疑問を見つけて自由に考えたい。そう考えているんですよね、僕…」 なんだか、難しいな。それってすごい疲れると思う。体もだけど、特に心が…。 今まで花丸の奇行に付き合わされることは多々あったけど(体育着をメイド服に変えられて一緒に写真取らされたり、勝手に強盗犯に仕立て上げられたり)、こんな話を聞くのは今日が初めてだ。 正直、俺にはこいつの気持ちを理解しようとしても微塵も理解できない。 だけど…。やっぱり俺は俺の意見を言うしかないだん。たとえこいつが嫌っていることでも…。 「すごいと思う。花丸はすごいよ」 「え…」 「俺も、やっぱり答えを決めつけちゃう側の人間だから、花丸の気持ちはわからない。でも、花丸のそういう自由な考えはすごいと思う」 「…。」 「そういえば、俺の親友が言ってたけど。『人間どうしても他人が食べたくなる時がある』って言ってた。」 「はい?」 「俺も聞いた瞬間は意味不明だったよ。」 「どういう意味なんですか?」 「食べたくなるほど大好物な人間が出来てしまうのが人間だってな。そいつも、お前と同じで人間嫌いだったんだって。今でも嫌いだって。でも、逆に食べてしまいたくなるほどの人も居るって言ってた。」 「…。よくわからないです。」 「俺も今だにわかんないよ。でも、そいつはその食べたくなる人間ってどういうやつなんだ? って聞いたとき、さっきのお前と同じことを言ってた」 「…どんなことを?」 「『決めつけたら、大好物じゃないんだよ。大好物は答えの出ない、答えの出したくない気持ちなんだから』って。俺はそれを聞いてすごいって思った。」 「ホントにすごいですね、その人。」 「うん、ホントにすごい。敵わないよ。そういえば、こうも言ってたな。『僕の大好物? 大嫌いな人間だよ。とっても大嫌いな大好物なんだ』って」 「なんか、僕には理解できます」 「だろうな、そいつ自分の考えは自分と同じベクトル思考の人間しかわからないって言ってた。理解しようとするなんて結論を出そうとしたら、それこそ絶対に理解できないって」 「そうですね。僕もそう思います。僕も、結局結論の出せない人間ですから」 あぁ、畳(たたみ)…。お前と同じようなのって探せばいるんだな。 安心した。お前は一人じゃないぞ。 お前は世界で一人じゃないんだ…。 しばらくして、道の分岐点に着いた 「じゃあ、僕こっちなんで。また明日」 「ん。あぁ」 そういうと花丸は背を向けて去って行った 「あの!」 「!?」 と思ったが数十メートル先で留まっていた 「僕も食べたくなるような人間ができたんですけど! どうしたらいいですか!?」 はじめて、はじめて花丸から真剣な質問をもらった。 多分、彼女にとっても初めてだろう。顔を真っ赤にして叫んでいる。 不覚にもカワイイとか思ってしまった。 ……。 ………。 「そいつのこと嫌いになればいいと思う!!」 「はい!?」 自分の言った言葉に、俺自身もまさかのビックリだ。 「だって、嫌いなら、大好物になれるぞ!」 「は!?」 「『好き』なんて結論出すなよ! 好きなんだったら、嫌いから始めろよ! そのほうがお前らしいと思うっ!!」 「意味不明ですよっ!」 「俺も自分で何言ってんのかわかんない!」 「駄目じゃないですか!」 「それでも! どうだった? 俺の言ってること理解したか?」 「……。」 「………。」 「理解できません!」 「…そっか…」 「でも! 感じました!」 「……。…おうっ! 上出来だろ!」 「はいっ!」 帰り際、彼女の言葉とともに出た満面の笑みは、とても眩しくて食べてしまいたくなった。 「あぁ。お帰り!」 「うん、事の事情を説明してくれるか?」 「その…頑張って掃除してたら、な。その…張り切り過ぎて居間を吹き飛ばしちゃった…んだが」 俺の今日はどうやら長い… |
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